郊外住宅とは?
戦後から、高度経済成長にかけての時期、多くの人が東京に集中しました。そして、その時期に経済成長を支えた人々が、家族を持った時、受け皿となった場所が郊外の住宅地です。庭付き戸建て住宅に住むことが社会的なステータスであり、理想的な暮らしだった時期でもあります。
しかし、1900年代の終わりから、暮らしの場を都心に求める人が増加しました。郊外住宅で育った子供たちが成長して、家族と共に都心部で暮らすようになった為、郊外の住宅地は高齢化が進み、空き家が増えるという問題も発生しています。そして、去年から今年にかけて、再び郊外住宅が注目を浴びています。テレワークが増えたことをきっかけに、郊外住宅の魅力が見直されてきたからです。
ただ、空き家問題などから、郊外住宅にマイナスなイメージを持つ人もいます。空き家問題の一因である、郊外住宅で育った子供たちは、なぜ両親の残した家に住まなかったのでしょうか?その理由の一つは、昭和から平成にかけて建築された家の暮らし難さです。
暮らしやすい家の基本は、室内環境の快適さ、現在の家族の暮らし方にあっている間取り、ライフステージの変化に対応できる間取り、家族の好みに合う外観と内装です。これらの要素の中で、空き家になっている住宅のほとんどが、室内環境の快適さと、現在も将来も暮らしやすい間取りという要素を備えていないからなのではないでしょうか?
室内環境の快適さ
ここ数十年で、住宅の断熱性は大きく進化しました。日本の家は寒いと言われた時期に建てられた家は、断熱性が低く、冬寒く夏暑い家が多いのです。冷暖房をつけても、快適な室温を維持できない、廊下や洗面所など暖房をしていない場所は熱さ、寒さが厳しく、暖房をしている部屋との温度差が大きい、冷暖房を止めると、急激に室温が変わるというような状態です。
その結果、マンションで暮らしている人から、戸建て住宅は寒い、光熱費が嵩むと誤解されてしまうことがあります。しかし、戸建て住宅が寒いのではありません。住宅の断熱性と気密性が確保されていれば、確実に室内の快適性は、最小限のエネルギーで維持できます。
暮らしやすい間取り
近年、家の中での家族の暮らし方が変わってきました。家族の誰もが多くの時間をリビングで過ごすという暮らし方です。家の中心にダイニングキッチンと繋がる広いリビングがあり、家族それぞれが自由に過ごせる間取りです。玄関からリビングに直結するようになっているので、家族の帰宅時にも、自然なコミュニケーションが生まれます。
一方、昭和から平成にかけて建築された家では、家族のプライバシーを尊重することを重視した間取りが多く、居室が細かく分かれていました。その為、現代の暮らし方には合わない間取りになってしまっています。
ライフステージの変化に対応する可変性のある間取り
家族の暮らし方は、子供の誕生、成長、独立、家を建てたご夫婦のリタイアなどの節目で変わっていきます。その変化に対応しやすい間取りであれば、現在の暮らし方に合わせてリフォームできますが、細かく居室が分かれている間取りは、リフォームに制限が出てしまいます。
現代の郊外住宅は、マンションと変わらない、またはそれ以上の室内環境を備えています。そして、規格住宅には、現代人のライフスタイルに合う間取りが多数用意されています。注文住宅であれば、家族構成、家族の暮らし方、家族の好みに合わせた暮らしやすい間取りにできます。
郊外住宅の魅力
都心部に住む理由の中で、大半を占める要素は、利便性です。通勤通学に、2~3時間使ってしまうと、多くの時間を無駄にしてしまうからです。しかし、テレワークによって、毎日出勤する必要がなくなった人も増えています。大学でもリモート授業が増えています。時期的にテレワークが増えているだけではなく、日立製作所や富士通のように、基本的な働き方改革を始めた企業もあります。週に1~2回の出勤ですむならば、通勤通学に、2~3時間を費やしても、それほど苦にはなりません。それが可能なのであれば、土地が高額な都心部に家を建てることにこだわる必要はなくなってくるのではないでしょうか?
参考資料
株式会社日立製作所「在宅勤務を変革のドライバーとする働き方改革を推進
子育てしやすい環境
子育てをしているご夫婦にとって、一番の願いは、子供が無事に成長することではないでしょうか?安全で緑豊かな環境は、郊外住宅の魅力の一つです。一般的な年収で、都心部で戸建て住宅を建てる場合、土地の価格が高額なので、狭小住宅になってしまいます。狭小住宅は、隣家との距離が近く、日当たりや風通しが確保しにくい、隣家からの生活音やニオイが自宅に侵入してくるなどの問題が発生することがあります。
せっかく子供をのびのび育てる為に、戸建て住宅を建てても、隣家と位置関係によっては、マンションのように、子供の泣き声に気を使わなくてはならない状況になってしまうかもしれません。郊外住宅では、隣家との距離があるので、日当たりや風通しが遮られる心配がありません。お互いの生活音が気になることもありません。
また、庭のある暮らしができるので、子供と一緒に草花の手入れをしたり、野菜を育てたりといったことを楽しめます。庭での時間は、土を触わり、植物の世話をするだけではなく、空の雲を眺める、風の匂いを感じるなどの自然との触れ合いがあります。このような自然との触れ合いは、子供の脳を活性化させ、五感の発達を支えます。
制限の少ない自由な家づくりができる
家づくりに制限が出る理由は予算です。限りなく予算があれば、無制限で家づくりができますが、そんな家づくりができる人は、ごく一部です。一般的には、家族の年収に見合った予算の中で、家づくりを進めます。そのような状況の中で、都心部に家を建てる場合には、高額な土地を購入しなくてはならず、結果的に狭小地を選ぶことになります。一方、郊外住宅の場合、都心部に比べると、低価格で広めの土地を購入できます。
同じ家づくり予算の中で、そのほとんどを土地の購入に充ててしまった場合、建築費は減少します。敷地の狭さと、建築費の少なさという2つの制限の中で、家づくりを進めていくので、非常に制限の多い家づくりになってしまいます。一方、土地の価格が抑えられれば、敷地の面積からも、建築費からも制限されることが少なくなり、自由な家づくりができます。
子育てを機に家づくりを検討されているご家族においては、都心部だけにこだわらず、郊外住宅での家づくりに目を向けてみませんか?