新築住宅を建てる際の家づくりプランには、大切な要素がたくさんあります。耐震性、防犯性など、命と財産を守るための住宅性能、断熱性、気密性など温熱環境を調える為の住宅の機能、ストレスなく暮らせる間取り、居心地の良い内装、家族のイメージを周辺にアピールする外観など、どれも欠かせない要素です。
その中で、家族の暮らしに大きく関わることの一つが、リビングルームの在り方です。限られた床面積の中で、家族が家にいる時間を最も居心地よく過ごせるリビングを造るためには、どうしたらよいのでしょうか?
家族の暮らしとリビングの関係
家族の家での過ごし方によって、求められるリビングのスタイルは変わってきます。近年増え続けているリビング中心の間取りプランは、家にいる時間のほとんどをリビングで過ごすという家族に最適な間取りです。
家の中心となるリビングにする場合のポイント
近年、家にいる時に過ごし方が変化してきています。サザエさん一家のようなキッチンとお茶の間が分離されている暮らし方ではなくなってきているのです。リビング中心の間取りでは、リビングとダイニングとキッチンが繋がっています。キッチンでの作業中でも、家族全員とコミュニケーションがとれる間取りです。そしてリビングで過ごす家族は、常にテーブルや座卓を囲んで談笑しているわけではありません。それぞれが好きな場所に陣取り、自分のしたいことをして過ごしています。
例えば、母親は読書、父親はタブレット、上の子供は勉強、下の子供はゲームというような感じです。もちろん、皆で談笑を楽しむこともあります。ただ多くの時間は、リビングで、好きなことをして過ごしているという家族が多いのです。それを考えると、リビング中心の間取りには、リビングにある程度の広さを確保することが求められます。
リビングに多めの面積を使うために、客間や書斎、子供部屋などを削ることもあります。家族の考え方、価値観によって、削られる部屋の種類は決められていきますが、不便なことも出てきます。客間を削った場合には、いつでもお客様を迎えられるリビングにしておかなくてはなりません。書斎や子供部屋を削った場合には、リビングルーム内に、集中できるコーナーが必要です。
いつでもお客様を迎えられるリビング
子供がすでに中学生以上になっている、専業主婦がいるというようなご家庭では、常にリビングをきれいにしておくのは、難しいことではないでしょう。しかし、まだ子供が幼い場合、特に、兄弟姉妹が多いご家庭や、共働きをしているご家庭では、モデルルームのようなリビングを維持するのは難しいものです。
収納
客間を作らない場合には、散らかりにくいリビングにする間取りが求められます。リビングが散らかってしまう原因は、就学前の子供がいる場合には、子供がリビングで遊ぶからです。おもちゃなどが散乱してリビングが片付きません。
学校へ行くようになった子供がいる場合、リビングが散らかってしまう原因は、帰宅時の荷物をリビングに持ち込むからです。リビング中心の間取りの良さの一つは、帰宅した子供が、リビングを通らなくては、自分の部屋に行けないということです。帰宅した際に、必ず家族と顔を合わせるので、子供の行動が把握できます。一方、玄関とリビングが直結しているということは、外出時に持っていたバッグや、着用していたコートをリビングに持ち込むことにも繋がります。
そのような状態にならないようにするためには、玄関、またはリビング内に家族で使える収納スペースが必要です。小さな子供がいる場合に、開閉の手間がないウォークスルークローゼットが最も向いています。リビング内に広めのウォークスルークローゼットを作り、内部に棚やパイプハンガーを設ける際、勉強コーナーを加えることもできます。玄関に作る場合には、土間収納と組み合わせると、スポーツ用品や、ベビーカーも収められます。敷地の形状や間取りによっては、玄関からリビングへの通路の一部をウォークスルークローゼットにする方法も考えられます。
配置と視線
もう一つの方法としては、ダイニングキッチンと、リビングの並べ方によって、リビングからの視線を遮るという考え方があります。ダイニングキッチンに対して、リビングをL字に配置するという方法です。
敷地の形状によって、ダイニングキッチンとリビングを一直線に並べる場合には、キッチンとリビングの間にスケルトンタイプのリビング階段を設けるという選択肢もあります。
スキップフロア構造の家では、段差が緩い区切りになり、キッチンへの視線が気になりません。
勉強コーナーやワーキングスペースのあるリビング
最近は、受験の時期には、塾に通う子供がほとんどです。勉強は塾や図書館でするという子供が多いようです。反対に、小学生のうちは、自分の部屋を与えられていても、勉強をお母さんに見てもらうので、リビングで勉強する子が多くいます。
子供部屋を作るか作らないかは、家族の考え方によって変わってきます。就寝、勉強以外に、お友達をよんで遊べるような広さの子供部屋を与えてあげたいという考え方もあれば、居心地の良い子供部屋を与えると、子供部屋にこもりがちになるから避けたいという考え方もあります。以前は、6畳程度の子供部屋が一般的でしたが、現代では、家族はリビングで過ごす時間がほとんど、子供部屋に行くのは寝る時だけという家族が増えています。
また、家全体の床面積との割合を考えると、子供部屋を広くするとリビングが狭くなってしまいます。子供部屋は必要最小限の面積にする、または作らないという場合には、リビング内に勉強コーナーを作っておくとよいのではないでしょうか?前述したようなリビング内のウォークスルークルーゼットに勉強コーナーを作ることもできます。対面キッチンにする場合には、キッチンの前面にカウンターを設けると、子供はそこで勉強できるので、食事の支度をしているお母さんが合間を縫って宿題を見てあげられます。
また、最近は、テレワークをする会社が増えているので、書斎を作っておきたいというお父さんも多いかもしれません。書斎を作ると、リビングが狭くなってしまうという場合には、リビング内にお父さんのワーキングスペースを作るという方法も考えられます。
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吹き抜けがあって、2階からの陽射しが溢れるような広々としたリビングにしたいという想いもあれば、ウッドデッキやテラスに繋がるアウトドアリビングも楽しめるリビングにしたいという希望もあるでしょう。家づくりプランでは、夢が広がっていきます。しかし、実際には、敷地内に建てられる家の床面積には限りがあります。
そして、家族の人数や暮らし方、考え方によって、リビングの在り方は変わってきます。家にいる時間は、家族全員、リビングで過ごすことが多いという暮らし方、家族揃って居心地の良さを共有したい、子供が中学生、高校生になっても、自然に見守りたいという考え方であれば、子供部屋や書斎より、リビングに床面積を使えるので、広々としたリビングを作れます。
すでに子供が成長していて、家族全員が食事の後はそれぞれの部屋で過ごすという暮らし方、プライベートな時間が大切という考え方であれば、ゆったり食事のできるダイニングを造り、家族それぞれの部屋を充実させるのも良いのではないでしょうか?